業務の兼任は大変だ。これは間違いない。
何が大変かというと、業務量が増えるのもそうだが、それ以上に「違う仕事をする時の脳みその切り替え」、つまりコンテキストスイッチがとにかく辛い。これは当時の上司にも釘を差されたことだった。
僕の場合、ソフトウェアエンジニアとマーケターの兼務を数年していた。この経験を踏まえて、コンテキストスイッチの大変さと兼務する上での心得について書いてみたい。 偉そうに言えたもんではないが、誰かの参考になればと。
兼務はパフォーマンスを下げる
トム・デマルコの『ピープルウェア』でもたしか触れられていた。「人は一つのことに専念する時が最もパフォーマンスを発揮できる。どんなに優秀な人でも、マネージャーとプレイヤーの両立や複数プロジェクトの掛け持ちをすればするほど、パフォーマンスは落ちていく。」
実際、僕も兼務していた時は常にそう感じていた。「開発にもっと集中できれば、絶対にいいアイデアや実装ができるのに」「マーケティング施策をもっと追いかけられれば、いい提案ができたり、細部にもこだわれるのに」という思いが常にあった。
しかも厄介なのは、綺麗に50%・50%に分かれることがないということ。イメージ的には45%・45%で、自分の体の中の10%ぐらいが欠損してしまう感じ。つまり、足し合わせても100%にならない状況になってしまう。
どちらも100%コミットできず、綺麗に等分にもできない。これが兼務の最も苦しいところだと思う。
対処法1:スケジュールを明確に分ける
コンテキストスイッチは避けられないが、頻繁に発生しないよう工夫はできる。
僕がやっていたのは、業務をやる日を明確に分けること。例えば:
- 週の前半は開発、週の後半はマーケティング活動
- この週は開発、次の週はマーケティング活動
もちろん、日常のやり取りやコミュニケーションは毎日入ってくるので、それには対応する必要がある。でも、メインのタスクについてはなるべく明確に分けることを心がけていた。このあたりはシングルタスクという本を読むとより詳しく書いてある。
対処法2:周囲への宣言と期待値調整
これがすごく大事だと思うのだが、関わるメンバーや周囲の人に「自分がここまでやります」「直近1〜2ヶ月でこういうことをやります」ということを先に宣言しておく。
僕の場合:
- 細かい実装タスクには入れないかもしれないが、設計方針を決めるミーティングには必ず出る
- いいアイデアが出たら積極的に伝える
- マーケティングのスケジュールに合わせて「この週はこちらに集中します」と事前に伝える
逆にマーケティングチーム側にも「開発がこういう事情なので、ここは開発に入ります」ということをなるべくは伝えるようにしていた(と思う)。
なぜ宣言が重要なのか
自分のスケジュールやタスク管理をするだけでなく、どういう成果を出そうとしているか、どういう進め方をしようとしているかを周囲に伝えることが案外重要だ。
というのも、兼務していると「あちらもこちらもやって、この人何をやってるのかわからない」という状況になりがちだからだ。でも事前に伝えておくことで:
- 相手が「このタイミングだったら来てくれる」「このことを期待して話せばいい」とわかる
- 「それじゃ足りない」「もっとやってほしい」「それをやらなくていい」といったフィードバックも事前にもらえる
- 期待のミスマッチがなくなり、お互いに心理的にも安心してやれる
まとめ
兼任・兼務の大変さは:
- 業務量の増加
- コンテキストスイッチの複雑さ
- 自分の成果が足し合わせても100%にならない状況
基本的に兼務はパフォーマンスを下げる行為だということを大前提として理解しておくといいかも。
その中での対処法は:
- スケジュールを固めて、なるべくコンテキストスイッチが発生しないようにする
- 周りの人に自分のやり方・進め方・目標などを明確に伝えて協力を仰ぐ
兼任や兼務をやることになった人の参考になれば幸いだし、僕自身も兼務をやっている人からアドバイスをもらったり助けてもらったりしたので、そういう人たちにもマジ感謝、感激、スペシャルサンクス
他の人のやり方も知りたいとこでもある。割とプレイングマネージャーとかもなりがちかも?