2025/11/09 このエントリーをはてなブックマークに追加 はてなブックマーク - 新卒ソフトウェアエンジニアがAIに本当に奪われるのものは「プログラミング機会」

新卒ソフトウェアエンジニアがAIに本当に奪われるのものは「プログラミング機会」

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はじめに

最近、ポッドキャストで「AIは新卒ソフトウェアエンジニアの仕事を奪うのか」というテーマについて話してみた。この問いに対する僕の答えとしては「細かな作業は実際奪われていくかもしれないが、レビューや意思決定といった部分は残るので、新卒ソフトウェアエンジニアであっても仕事は完全には奪われない」という結論になった。

しかし、それを話してみてからもう少し考えてみたくなった。

奪われるのは「仕事」ではなく「機会」

実は、「仕事」ではなくて「コーディングする機会そのもの」が減ってるんじゃないだろうか。それはつまり、学びの機会がAIに奪われているともいえる。

これは、昔あった「IDE使うな論争」に近いかもしれない。VS CodeやIntelliJ IDEA、Eclipse、Xcodeなど、いわゆる統合開発環境が登場した時、コード補完が出てきたり、右クリックでインターフェースの実装を自動生成してくれたりする機能を「使うな」という派閥がいたわけだ。

初めにコードを自分の手で書いてから、理解した上でIDEで楽をするという手順を取るのが大事だと言っていた人たちがいた。そして今、AI時代において同じような構造の問題が起きているのかもしれない。

AI エージェント時代の到来に感じる馬鹿らしさ

Claude Code、Codex CLIなどAIエージェントが出てきた時、ほとんど自分がコードを書かなくて済むし、イエス・ノーだけの世界になったり、レビューをするだけの世界になる。そうすると、実際にタイピングしたり、どういうところでコンパイルエラーが出たりとか、どういう補完をするといいとか、コーディングをする上での基礎体力というのは奪われてしまうかもしれない。

結局、どういうプロセスか(自分でコードを書くかAIが書くか)に関わらず、いい機能を作ったり、プロダクトを作ったり、ソフトウェアを作ったりというところでは変わりない。しかし、どうしても自分でプログラムをする機会が減るので、その基礎体力的なところは如実に減ってしまう。

仕事云々よりも、そのコードを書く機会が奪われるというのが一番困りそうな気がする。AIが楽に書いてくれるんなら自分で書くのは馬鹿らしい。過去もそうで、IDEが気を利かせてやってくれるのに、わざわざ全部手書きで書くのも馬鹿らしい。

新卒とベテランの違いは、この機会損失

だから、新卒にとって本当に奪われるとしたら、仕事が奪われるというより「プログラミングをする機会」。自分でコードを書くというチャンスが取られちゃっている可能性がある。

一方で、一通りコードを散々書いてきたシニアエンジニアやスタッフエンジニア、ベテランと言われるような人たちにとっては、「もう一通りコード書いたから、そこはAIにやってもらっても別に構わない」という人もいるかもしれない。

技術発展と「強制ギブス」の矛盾

AIが作れない部分。その残ったところでオリジナリティを出したり、判断をしたりということになると、より原始的なタイピングとか、コードを書くとか、いろんなメソッドを探索的に調べて、どのメソッドを使うこと(言語組み込みのビルトインのライブラリとか何を使うとか、外部のライブラリー何を使うとか)という細かいことからだんだん離れていくような気もする。

でも根本的には、やっぱりその発達した技術を使わないで、そこを使わない、禁止してやるっていうのはすごく時代に逆行している。IDE禁止だとか、ラムダ式禁止とか。新しいテクノロジーや技術が出るたびに禁止したり、逆に良くないみたいな言説や主張が生まれたりするわけだ。

ただ、IDEとかはアシストなのだが、AIエージェントとかってなってくると、アシストを超えてもう勝手に動いてくるわけなので、そういうコーディングの機会というのは如実に奪われていっているのかな、というところ。そこが、多分そのシニアエンジニアやスタッフエンジニア、ベテランに比べると、新卒のソフトウェアエンジニアの方がダメージがでかいんではないかと思う。

では、どうするか

1. プロダクト全体を見る力を磨く

一つは、思い切って一気通貫でアプリを作るとか、プロダクトを作るというディレクター的なところや、プロダクト自体を全部見るというところに振り切る。そのキャリアを早く進むことが、いろんな人ができるようになったかもしれない。

2. 仕事以外でコーディングの機会を作る

一方で、そのコーディングをする機会は奪われているので、仕事以外の機会で自分でコードを書いてみる。例えば、本や教材であるような「コードを自分で書いてみましょう」というエクササイズをAIなしでやってみるというのは部分的にはありかもしれない。

あとは競技プログラミングと言われるような、いわゆるコードを書くこと、自分だけで書くことも目的にした問題に取り組んでみる。

※競技プログラミング界隈もAIに対してどういうレギュレーションを作ってんだろうなとか、地味に気になるところではある。

3. 時々はAIに頼らずに書いてみる

仕事以外でそういった機会を作るか、時々はAIに頼らずに仕事でも書いてみるとかをしないと、仕事で磨かれていっていたはずの部分が、新卒のソフトウェアエンジニアだと磨かれていかないのかもな、というところはあるのかもしれない。

「プログラミング」の"価値"

AIというテクノロジー自体は全然いいのだが、一番それが新卒のソフトウェアエンジニアとかキャリアが浅い人にとってのダメージになるような気もする。それか、プログラミングを自分で書くこと自体の価値がどんどん下がっていくのか。そうすると、その価値というのは下がると判断して、そこはバッサリと諦めるとか割り切るというのも一つの手なのかもしれない。

低レイヤーと高レイヤーの往復

でも結局、根本的には原理原則とかコアな部分——例えばカーネルがあってOSがあってとか、CPUがあってとか、その上でアプリケーションが動いているとか、高級言語というものがあって、コンパイラがあってとか、インタープリターがあってとか、いろんな処理系があるとか——そういうところ、さらにコーディングは手で書いたりもできて、さらにそれを便利にするためにはIDEがあって、いろんな情報があって、それをAIがまとめている。それらをあたかも人間が書いたかのようなコーディングができるという風に、より低レイヤーから高レイヤーになってきている(AIは単純に上位レイヤーとは言えない別文脈のものだけれども)

結局、その何層にも重なっている深い構造が理解できないと、問題が解決できなかったり、分からなくなったりする瞬間も多くなってきそう。

なので、よりAIに踊らされやすいとか、その表層的な部分しか見れなくなってしまうというリスクがある。

常に手で書けとか、そういうところは考えなくていいと思うが、一度は自分でコーディングしてみるとか、OS作ってみるとか、パソコン組み立ててみるとか。

レイヤーを下げるとか、低レイヤーに潜り込んだり、元のレイヤーに戻るという往復をして、より具体的なところとか、コアな部分を見る。それを見た上で、より今やっていることが何なのかというのを改めて理解するというような行き来、往復みたいなのは大事なのかなという気もする。

おわりに

実際、新卒のソフトウェアエンジニアの世界でどういうことが起こっているのか分からない。

むしろAIが入ったことによって学習サイクルがめちゃくちゃ速くなって、新卒の1年目にして超ベテランだったりとかという人がいっぱい生まれてたりする可能性もあるし、学生時代、就職前からすごいプロダクト作ってる人もいっぱい増えているかもしれない。

そこが楽しみでもあり、どうなっているのか知りたいところでもある。

2025/10/04 このエントリーをはてなブックマークに追加 はてなブックマーク - 手戻りなんてないさ

手戻りなんてないさ

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手戻りといえば、一度転職してから元の会社に戻ること…いや、それは違う。これは「出戻り」だ。
よく手戻りと出戻りを混同している人がいるが、毎回気になるところではある。
まあそれは置いておいて。

手戻りというのは、いろんな工程を踏んでやったのに、またやり直しになることを指す。

手戻りとは、作業工程の途中で問題が発生し、
前の段階に戻ってやり直すことを指します。

https://aippearnet.com/column/glossary/temodori/

手戻りという捉え方の問題

しかし、これって結構難しい概念だと思う。
手戻りという言葉を使ってしまうと、全部却下されてやり直しになるような印象、プロセスの逆流のようなイメージを受ける。 でも、そうやって捉えてしまわない方がいい場面も結構あるんじゃないかと思う。

例えば

  • ドラフトやアイデアを作る
  • レビューする
  • 実装する
  • テストとかレビューとかする
  • 「じゃあこれでやっていきましょう」とリリースする

その途中、リリースのプロセスだったり、実装し始めてからのプロセスで何かフィードバックをもらって、そのポイントの調整・やり直しが必要になる。これを「手戻り」として受け取ってしまうとする。

フィードバックサイクルとの区別

でも、よくよく考えると、実はこれってフィードバックサイクルの一環なんじゃないだろうか。

これを仮に手戻りと呼んでしまうのであれば、イテレーション開発とかアジャイルとかスクラムとか呼ばれるものは、全て「手戻り開発」であると言えてしまう。 実はこの手戻りをただ素早くやっているだけなのである(我々は、手戻り開発をやっていたのだ!)

だから、手戻りという言葉はあまり使わない方がいいんじゃないかと最近思う。

どうしてかそう思うかというと、そこまで重くないことのやり直しで手戻りと感じるというのは、多分、各プロセスを重く置きすぎだからなのかもしれない。それはウォーターフォールがやってきたことだ。

フィードバックサイクルと真の手戻り

僕は最近、本当に全く同じ作業をやり直すという、まさに「手戻り」というのを経験した。
おそらくこの、「問題が見つかって、本当に全く同じ作業をもう一回ゼロからやる」ということこそが手戻りなんだと思う。

だから、それと、フィードバックループやPDCAサイクルというのは混同しない方がいい、ごちゃ混ぜにしない方がいいと思う。

フィードバックを引き出すプロセスづくりが大事

いや、もちろん上長だったりリーダーだったり、ビジネスメンバーだったり申し訳なさみたいなのあると思う。

「こう出来ないですか?」と言うのはやり直しや調整のお願いではあるので。

でも、この「申し訳なさ」を感じさせてしまっていると、いいフィードバックなんかもらえないじゃないですか。言ってくれなくなるのでね

一度立ち止まって考えてみてもいいかもしれない

結局、手戻りというのは、起こったフィードバックだったり、この変化の適用というのをネガティブに捉えてしまう言葉かもしれない。それは勿体ない。

「手戻りなんてないさ」と言いつつ、本当の手戻りというのは真の意味で存在する。でも、ほとんどの場合は手戻りと捉えてしまっているだけで、本当はただのフィードバックサイクルなのかもしれない。
プロセスの逆流がなるべく発生しないようにするのは、進め方として気をつけたほうが良いですけどね。

まとめ

ということで簡単にまとめます。

  • 手戻りというのは、行った作業を全く同じようにもう一回やり直すということ、その工程が繰り返されること
  • 一方で、手戻りとして捉えてしまうけども、実はそれはフィードバックサイクルの一環と考えた方が良いものもあるかもしれない
  • 手戻りという言葉をそろそろ再定義しても良いかもしれない
  • そのフィードバックサイクルがうまく循環せずに、単なる工程の繰り返しになってしまっているということは、プロセスの進め方自体に問題があるのかもしれない
  • 「手戻り」という風に受け取ってしまうと、純粋なフィードバックをビジネス側・顧客側から得ることができなくなるので、建設的ではなくなってしまうかもしれない
  • フィードバックサイクルをうまく回す。そしてフィードバックをうまく受け取る。そして業務プロセスを繰り返さないように済むような形で、インクリメンタルに開発するとか取り組んでいくというのが一番いいんじゃないだろうか

変化を受け入れたいし、変化を受け入れやすいプロセスや協力関係を上手くつくりたいと常々思いますね(自戒)

2025/09/14 このエントリーをはてなブックマークに追加 はてなブックマーク - 業務を兼任することになった時にやってたこと

業務を兼任することになった時にやってたこと

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業務の兼任は大変だ。これは間違いない。

何が大変かというと、業務量が増えるのもそうだが、それ以上に「違う仕事をする時の脳みその切り替え」、つまりコンテキストスイッチがとにかく辛い。これは当時の上司にも釘を差されたことだった。

僕の場合、ソフトウェアエンジニアとマーケターの兼務を数年していた。この経験を踏まえて、コンテキストスイッチの大変さと兼務する上での心得について書いてみたい。 偉そうに言えたもんではないが、誰かの参考になればと。

兼務はパフォーマンスを下げる

トム・デマルコの『ピープルウェア』でもたしか触れられていた。「人は一つのことに専念する時が最もパフォーマンスを発揮できる。どんなに優秀な人でも、マネージャーとプレイヤーの両立や複数プロジェクトの掛け持ちをすればするほど、パフォーマンスは落ちていく。」

実際、僕も兼務していた時は常にそう感じていた。「開発にもっと集中できれば、絶対にいいアイデアや実装ができるのに」「マーケティング施策をもっと追いかけられれば、いい提案ができたり、細部にもこだわれるのに」という思いが常にあった。

しかも厄介なのは、綺麗に50%・50%に分かれることがないということ。イメージ的には45%・45%で、自分の体の中の10%ぐらいが欠損してしまう感じ。つまり、足し合わせても100%にならない状況になってしまう。

どちらも100%コミットできず、綺麗に等分にもできない。これが兼務の最も苦しいところだと思う。

対処法1:スケジュールを明確に分ける

コンテキストスイッチは避けられないが、頻繁に発生しないよう工夫はできる。

僕がやっていたのは、業務をやる日を明確に分けること。例えば:

  • 週の前半は開発、週の後半はマーケティング活動
  • この週は開発、次の週はマーケティング活動

もちろん、日常のやり取りやコミュニケーションは毎日入ってくるので、それには対応する必要がある。でも、メインのタスクについてはなるべく明確に分けることを心がけていた。このあたりはシングルタスクという本を読むとより詳しく書いてある。

対処法2:周囲への宣言と期待値調整

これがすごく大事だと思うのだが、関わるメンバーや周囲の人に「自分がここまでやります」「直近1〜2ヶ月でこういうことをやります」ということを先に宣言しておく。

僕の場合:

  • 細かい実装タスクには入れないかもしれないが、設計方針を決めるミーティングには必ず出る
  • いいアイデアが出たら積極的に伝える
  • マーケティングのスケジュールに合わせて「この週はこちらに集中します」と事前に伝える

逆にマーケティングチーム側にも「開発がこういう事情なので、ここは開発に入ります」ということをなるべくは伝えるようにしていた(と思う)。

なぜ宣言が重要なのか

自分のスケジュールやタスク管理をするだけでなく、どういう成果を出そうとしているか、どういう進め方をしようとしているかを周囲に伝えることが案外重要だ。

というのも、兼務していると「あちらもこちらもやって、この人何をやってるのかわからない」という状況になりがちだからだ。でも事前に伝えておくことで:

  • 相手が「このタイミングだったら来てくれる」「このことを期待して話せばいい」とわかる
  • 「それじゃ足りない」「もっとやってほしい」「それをやらなくていい」といったフィードバックも事前にもらえる
  • 期待のミスマッチがなくなり、お互いに心理的にも安心してやれる

まとめ

兼任・兼務の大変さは:

  1. 業務量の増加
  2. コンテキストスイッチの複雑さ
  3. 自分の成果が足し合わせても100%にならない状況

基本的に兼務はパフォーマンスを下げる行為だということを大前提として理解しておくといいかも。

その中での対処法は:

  1. スケジュールを固めて、なるべくコンテキストスイッチが発生しないようにする
  2. 周りの人に自分のやり方・進め方・目標などを明確に伝えて協力を仰ぐ

兼任や兼務をやることになった人の参考になれば幸いだし、僕自身も兼務をやっている人からアドバイスをもらったり助けてもらったりしたので、そういう人たちにもマジ感謝、感激、スペシャルサンクス

他の人のやり方も知りたいとこでもある。割とプレイングマネージャーとかもなりがちかも?

2025/09/12 このエントリーをはてなブックマークに追加 はてなブックマーク - そうは言ってもHowは大事

そうは言ってもHowは大事

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最近よく見聞きする話がある。「Howばかりにこだわっちゃダメだよ」というやつ。
目的や理由、ターゲット、タイミングなどが重要で、手法にばかり囚われてはいけない、という主張。確かにその通りだと思う。

でも、この言葉ばかり聞いていると、なんだかHowが大事じゃないような錯覚に陥ってしまう。

そこに最近少し危機感を覚える。

Howは懐の深さと突破力

例えばこんなシーンを考えてみてほしい。

とある問題があるとき、

  • ひとつの問題に対して、1個の解決方法しか思いつかない人
  • 10個の解決方法を思いつく人
    どちらが有利だろうか?答えは明らかに後者だ。

10個の解決方法を知っている人は、その中から最適な2〜3個を選んで提案できる。これがその人の懐の深さや幅の広さ、突破力の源泉になる。

僕自身、経験の浅い領域では完全に素人になる。そんな時に「こういうやり方はどうですか?」と具体的な手法を教えてもらうと、状況が劇的に改善することがある。

つまり、Howが1つ増えることで、前提や解決の道筋がガラリと変わるのだ。

選択肢があることの真の価値

1個の解決方法しか知らないと、「こうやって進めるしかない」という近視眼的な思考に陥ってしまう。でも複数の選択肢があれば、その中から最善を選んで、より正しく、より的確に前進できる。

そうして正しく進んだ結果として生まれる余白や成果、生産性。それによって浮いた時間やお金を別のところにリソースを振り向けることもできる。

とことんHowを煮込んだあとに、Howへのこだわりを捨てる

もちろん、やり方だけが重要だと言いたいわけではない。でも一度は1つの分野で解決案を考え尽くして、「これは誰にも負けない」というレベルまで到達してから、「でもHowだけじゃダメだよね」と言うべきなんじゃないか。

「Howが大事じゃない」と言っている人は、それを考え尽くした経験がある人であるべきだと思う。Howは当然大事だけど、その上でちゃんと目的やターゲット、その他の要素も視野に入れて広げていく。

そういう順番を踏むことが重要なんじゃないだろうか。

だからやっぱり、そうは言ってもHowは大事。

とか、書きながら思ったんだけど昔すえなみさんが書いてた話とほぼ同じになっちゃったね。はうっ!

https://a-suenami.hatenablog.com/entry/2016/08/28/130633

2025/08/09 このエントリーをはてなブックマークに追加 はてなブックマーク - 「コンテキストをすくい上げて育てる」のが良い会話だとわかってきた

「コンテキストをすくい上げて育てる」のが良い会話だとわかってきた

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前提

自分はビジネスサイド(マーケティング部)に所属し2025年を過ごしている。そのため、他チーム・他職種の人と会話する機会が増えた。

話し方・進め方を見つめ直す必要があった

エンジニアチーム→ビジネスサイドで何が変わったか

今まではエンジニアチーム内で、ある程度お互いの性格や価値観が分かってる上で会話することが多かった。しかし最近は、あまり関係性の深くない人と会話することの方が多くなった。

難易度の上がった会議とコミュニケーション

さらに重要な会議も増えてきた。会話時間も限られている中で、意思決定したり、決定したことを実行に移すコントロールなど難易度が上がってきた。

例えばマーケティング施策に他チームに協力してもらうなど。また、細かな担当の変更、体制などヒトの変更みたいなところも色々発生している。

それぞれ容易くはないし、正直、苦心することが多い。

そういう事情もあり、話し方や進め方を考えることが多くなった。

対処としてやっていること

そのため、自分としてやったことは

  • 本を複数冊読むこと
  • 本で得た知識をもとに実際の会話やミーティングで実践すること

これの繰り返し。複数の本を読み実践する中で、共通項も見えてきた。なので、単純な読書録というより、自分なりに整理したこと、考察したことを書いてみようと思う。

長いので、気になるとこを拾い読みしてもらえればと思います。

想定読者

  • エンジニア〜な人々
  • いろんなチームと会話やミーティングする人

読んだ本

読んだ本を列挙すると以下。大きく3つに分けられそう(読みかけのものもある)

1. 話し方

  • 最強のエンジニアになるための話し方の教科書
  • Think Fast, Talk Smart
  • 1分で話せ

2. 相互理解や認知について

  • 他者と働く
  • 何回説明しても伝わらない。はなぜ起こるのか
  • ファスト & スロー
  • 予想通りに不合理

3. 会議の進め方

  • 結果を出す組織はどんな会議をしているのか

色々な本を読んでるが、それだけ試行錯誤を繰り返しているというところでもある。このあたり出来てる人は読まないで済む部分も多そう。

1. 話し方の本の要約と考察

聞き手が一番重要という逆説

話し方について共通して言えるのは「話すことより相手が聞く姿勢になってるかが重要」ということ。話し方の本なのに、逆説的に聞き手が一番重要だと書いている。

自分視点から相手視点への転換

僕のような話の下手な人はどうしても「上手く話そう」とする。抑揚だったり話す順番だったり。

でも、それでは自分にしか意識が向いていない。どれだけうまく話しても、相手が聞く姿勢でなかったり、聞く気持ちにならなかったり。

結局は聞き手が重要という至極当たり前のことが書いてある。言われてみればそう。

それが根底にあり、その上に話し方の上手さがある。

コンテキストに乗ってコンテキストを広げていくイメージ

聞き手の状態を見るということは、相手の状況を把握するのを繰り返す作業。これはエンジニアに馴染みの深い表現で言うなら、コンテキストを深くしていくイメージかなと思う。聞き手のコンテキストを掴み、自分の主張を盛り付けていく感じ。

多分AIと普段会話してる皆さんならわかるでしょう。でもAIと違うのは、会話を始める前から複数のコンテキストが点在していること。

自分の内なる声も聞く

「Think Fast, Talk Smart」には「聞き手の状況を見ると同時に自分自身の内なる声にも意識を向けろ」と書いてある。この本で特徴的なのはこの部分かなと思った。話し手と聞き手のそれぞれの状態を把握してその状況やニーズにあった会話ができる。

とっさの会話であろうとスピーチであろうと、結局は準備が大事。ある程度フレームワーク的に心得ていれば、どのタイミングでも話すことができると書いてある。

具体的に意識するようになったこと

  • アイスブレイクを30秒入れる。同意や感謝の言葉から入る
  • 質問をする、話を他の人に振る。相手の表情や反応を見る
  • 全てを話そうとしない
  • 話の構成をパターン化する。三段論法など

2. 相互理解や認知の本の要約と考察

視点の違いとバイアスの理解

他チームに納得してもらうこと、相手が働きやすくなるよう考えること、コンフリクトを生まないことなど考えると相互理解や認知が大事だと感じた。

さらに前述の、聞き手のコンテキストに乗る会話のためにも、相互理解や認知がなおさら重要なポイントだと考えた。

上記の部分があり、それを補助する系の本を読んでいた。

立場の違いと視点の違い

相互理解という意味だと、働く実務や役割によって視点が全く異なるということ。これが大前提かなと思う。そしてそれぞれが視点が違う中でもバイアスがある。このあたりは「他者と働く」や「何回説明しても伝わらない。はなぜ起こるのか」などに書いてある

人間の認知の曖昧さ

「ファスト・アンド・スロー」や「予想通りに不合理」は、いかに人間の認識が曖昧で、誤解を招きやすいかがわかりやすく書いてある。人間の脳の思考の癖、印象の受け方が書いてある。

このあたりを読んで、

  • それぞれの違いがどこから生まれるか
  • 難しさはどこから生まれるか
  • どういった認識や印象づけになるか

を理解した。ポジションの違いから認識の違いが発生しうることを念頭に置いた会話ができるようになったかもしれない。

具体的に意識するようになったこと

  • 相手の目標や進め方、課題、大事にしてることを知るための会話をする。時には相手の作業に入り込む
  • 相手の背景にあるストーリーを知るための会話をする。時には相手の作業に入り込む
  • 相手のコンテキストや用語、言い回しを知るための会話をする。時には相手の作業に入り込む
  • 言葉の通り伝わることはほとんどないと心得、相手にどう伝わっているかを都度確認する
  • どういう言い方でどう人間が認知してしまうか知り、意識して話す

3. 会議にまつわる本の要約と考察

相手に寄り添うだけで上手くいくわけない

聞き手のことを思って相手の立場を理解すると会議は上手くいく…わけではない!

上手く話すだけで会議が進むわけない

聞き手と自分を意識して上手く話していれば会議は上手くいく…わけではない!

準備の重要性

それだけでは足りない…!と、会議の進め方に関して、本を読んだ。会議の本以外にも、話し方の本にもプレゼンやミーティングでの話の進め方が含まれている。

それらに共通して言えるのは、「準備をする重要性」。会議のアジェンダやどういう話をするか、時間をどう区切るか?そういう根本的なことを案外みんな大事にしない。とっさの会話でも、ミーティングの予想しない議論でも準備やシミュレーションできた量が成功を左右する。

具体的に意識するようになったこと

  • ゴールを明確にすること。それを会議で合意すること
  • 目的を明確にするため話の流れを一通り手短になぞることも大事。会議で認識を揃える
  • 画面共有など視覚的に表すこと。また議事録はその場でリアルタイムに取ること
  • 後からメモ取ってテキスト共有しても誰も見ない。その場で飛び交う言葉をテキストに落とし込み、同じ画面を見ることに意味がある

まとめ

話し方や会議の進め方についての本を読みつつビジネスサイドで色々な人と会話を実践してきたところを整理した。

まとめると

  • とにかく準備が大事。準備できてないとうまくできない
  • 聞き手の視点に沿った話をすることが重要
  • 聞き手がちゃんと認知できるような情報を提供すること。画面共有やテキスト化をその場で出す
  • そういった聞き手の状況、心理を理解するために認知の理解や相互理解が前提となる

やはり当たり前を地道にしっかりやるのが重要ということ。どうしても話し方や進め方をうまくやろうとすると、自分視点になって相手を忘れがち。

どこまで行っても他者がいることで複数のチームで働くことは成り立っている。そのことに改めてハッとさせられたし、忘れてはならないなーとなった。

※便宜上「ビジネスサイド」という言葉を使いましたがあまり好きではありません ※ 自分はまだまだ全然出来てないので自戒や整理として書いてる部分が大きいです ※スキルアップとして読まなくても、どの本も読み物として面白いところが色々あったりなかったりします ※ 色々読んだけどエンジニアへのおすすめは「最強のエンジニアになるための話し方の教科書」。ベタにして、ベストかもしれない

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